THE TALE OF...
 
~snigle malt whisky~
 


墓標

組織に逆らうことはできない。
彼らから報酬を受け取り、私は生活をしているのだ。しかも、私と同年代のサラリーマンが受け取る給料とはケタが違う。
それほどの金額をもらっていながら仕事に不満をもらすことなどできないのだ。生きていることが当然のように思われている世の中が作られてはいるが、生きることのほうが、死ぬことよりも難しいのだ。
もちろん、自分の命を絶つ決断を下す為の勇気はそれなりに必要になるだろうし、考えに考えた挙句、自殺が自分にとって最善の方法なのだと結論が出たのであれば、それに越したことはない。
ただ、私はまだまだ生きたいと思っている人の命を奪って金をもらっていることも事実なのである。
それを組織の連中は「標的」と呼ぶ。
その標的は全てが成人した人間ではないのである。
もちろん女や子供だって当然のごとくその標的のなりうるのである。
私は一度、この仕事の意味がどこにあるのかを尋ねたことがある。
危機感を感じた政府は、狂気とも言える法案を国会に提出し、可決、即日施行という強攻策をとり、その一端を私に託した。
しかし、こうして一つずつ消していくよりも、ただ数を減らすだけならもっと効果的な方法だってあるのだ。
しかし政府は、いや、もしかしたら組織かもしれない。どちらにせよ、「一度に多く」という選択をしなかったのである。
こうして一つ一つ消されていくことによってどこで、だれが、いつ、なぜといった類の疑問が明らかにされないまま、国民全体に「いつ、どこでも、だれでも標的になりうる可能性があるのだ」という恐怖心を植え込んでいくかのように見えた。
もちろん私自身は標的にならないという特権を与えられたわけではないのである。規約にそんなことは書いていなかったし、そんな説明をされたわけでもないのである。
組織のやる仕事はいついかなる場合でも完璧で無駄のないものである。そんな彼らが説明をしなかったということは、私は特権を与えられていないことになる。
私だって組織に属している、私と同じ仕事をしている誰かに狙われているかもしれないのだ。おそらく、私を狙っている人物も誰かに狙われているだろう。
ひょっとすると、彼に私を狙うように指示をし、私に彼を狙うように指示したりするのだろうか。
いや、組織はそんな無意味な殺し合いはさせないだろう。
そして何よりも疑問に思うことが、私の次の仕事の内容である。
今までは標的を狙い、その命を絶つことであった。
もちろんそれが仕事であることは説明もされていたし、組織の考えが、標的の抹殺であることも事前に知っていた。
しかし今回は殺すなという指示がでているのだ。
しかも保存するという。
彼らには一体どんな考えを持っているのだろうか。
仮に私が標的を負傷させたとしよう。組織はその標的を持ち帰り、傷の手当てをし、どこか別の場所で自分たちの監視の下で生活させるといったことなのだろうか。
それとも私の想像をはるかに超えた何かがあるのかもしれない。
第一、私が組織から預かっている道具、標的を抹殺させる道具はただの銃のようにもみえるのだが、もう一つは標的を溶かしてしまうのだ。それも強力な酸を噴射させるようなものならまだ理解はできるのだが、これは光を照射する道具なのだ。
もはや現代の科学力では説明できるものではない。
いや、私が現代の科学力の隅々をしっているのかといえば、そうではないから実は現代の科学力では光でものを溶かすことが、最先端になっているのかもしれない。
いずれにせよ、言えることは国民が何も知らないところで、国民が見たこともない道具を使って、国民の想像をはるかに超えたスケールで、全てが動いているということである。



5月7日(日)02:01 | トラックバック(0) | コメント(2) | THE TALE OF... | 管理

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 by xg5tmpjfh7 | Mail | HP | 8月18日(金)19:40

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 by 9xdhxbuv4k | Mail | HP | 8月27日(日)04:09


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