THE TALE OF...
 
~snigle malt whisky~
 


思惑

組織に逆らえば、私など瞬時にこの世から消されてしまうのだろう。否、この世から私という固体の存在を消すだけではとどまらない。私がこの世に生を受けたことすらなかったことにされるのだろう。
組織は完成されたシステムにより管理されており、おそらくは神にもっとも近い場所にあるものなのだ。否、すでに神の力をも凌駕してしまっているのではないかとさえ思うことがある。そして私はその一端を担っている。私も神の一部となっているのだ。
にもかかわらず、組織が何を目指しているのかは知らない。
何も知らない、無知な神。
そこで否応なしに私は人間であることを感じる。

組織は何をめざしているのか・・・

その答えを見つけたくなってきたのだった。
今まで神ほどの力を持った組織の一員となり、本当は組織によって力を与えられ行動している兵隊にすぎないのに、まるで自分が神の力を得たかのように感じ、自分ひとりで大きな仕事をやり遂げた感覚になり、なにをするにつけても成功させるだけの自身を持っているのだ。これは私の自惚れかもしれない。
しかし、私が数々の標的を的確に処理をしてきた実績を考えると、その自身もあながち自惚れであるとは言いがたい。
標的を処理する際に必要である、現場での情報収集や瞬時の判断力、決断力は組織の力ではない。
まぎれもなく私の能力であり、才能なのだ。
そういった能力をフルに活用し、探りを入れていけば組織が何を目指しているのかある程度わかるのではないだろうか。

それにはまず、私が次の仕事をするときにある程度の情報を集める必要があるのだ。
次の標的は処理せずに保存をするということである。
そして、その保存をする役目は私ではない。
私以外の組織の人間が保存をするのである。
保存した後の使い道や、それだけの大きさのものをどこに保管しておくのかなど、「保存」という言葉だけでも疑問は出てくる。
ましてや組織が行う保存である。ただものではないだろう。

私に許されている弾数は三発。
標的に二発を打ち込み、一発は自分のみを守る為に残しておこう。そして私は立ち去ったふりをして、どこかから保存する部隊が現れるのを待ち、その様子をうかがっていれば、その場でのたいていのことは分かるだろう。

組織はいわば私の主人である。もちろん私は飼い犬であるが、私の中で徐々に主人に噛み付く犬の心理が分かってきたようで無性にわくわくしてきたのだった。
見てはいけないといわれたものを見る、という行為はこの国でも昔話という説話で読んだことがある。
あの男は私に余計なことは考えるなといった。しかしパスカルは言ったではないか、人間は考える葦だと。
私に考えるなというほうが無理なのだ。
私は私の判断で私として生きているのだから、私は考え、それを見るのだ。
半ば無理やり自分を納得させる形で、私は組織に噛み付く準備を始めたのだった。



5月10日(水)01:22 | トラックバック(0) | コメント(3) | THE TALE OF... | 管理

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 by 2xtpkr3jzu | Mail | HP | 8月18日(金)19:36

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 by fw0dcrehbx | Mail | HP | 8月18日(金)19:41

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 by laxhaolgc8 | Mail | HP | 8月27日(日)04:07


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