消えた言葉 |
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| こちらがどれだけアピールをしたとしてもきっと何も感じないのだろう。否、おそらく会話くらいはするかもしれない。興味を示し、仲がいいように見せかけるのだろう。 そしてこちらに妙な期待感を持たせておきながら、実は興味なんてなかったという事実を突然目の前に突きつけられ、私は奈落のそこに突き落とされてしまうのだろう。 彼はそういうやつなのだ。 彼は私を裏切っているのだ。 もちろん左側のやつも同じことだ。 この空間において、仲間意識を持ってしまったのは私の勝手であり、思い込みだ。しかもその思い込みによって勝手に裏切られているのだ。 悪いのは全て私である。 私の勝手な妄想が私を傷つけているに過ぎないのだ。 どうせならこの世界も私の妄想であってほしかった。 悪い夢なら覚めてほしい。 いったい私は誰なのかしらん。 どこかで、以前私が生きていたという証になるものを手に入れることができないだろうか。 たとえば、どこかの学校を卒業したときにもらった証書だとか 運転免許証だとか保険証だとか。
まて、私は覚えているではないか。 現在がいったいいつかも分からないって言うのに、自分が学校を卒業していることを知っている。 運転免許証を持っていることを知っている。 ましてや、侍を見て驚くということは私の生きていた時代は 侍なんて存在しない時代なのだ。 そしてベルトコンベアーを見て驚かないということは それが当たり前に存在してもいい時代なのだ。 なんだ、手がかりはあるじゃないか。 そして、この部屋の壁・・・こんなものは触ったことがない。 ということは、私が以前の私として生きていた時代には こんなものは存在しなかったことになる。
つまりだ、私は現在から考えると過去からやってきたのだ。 私のいる時代から未来にやってきたのだ。 おそらくあの侍もそうなのだろう。
そう思うと今まで嫌なやつに見えていた周りの人間がかわいそうに思えてきた。そして私はまた勝手に仲間意識を強く持ってしまうのだった。 彼らと協力することができれば、私の疑問はもっと解決するはずなのだ。否、解決してもらわねば困るのだ。 ここへやってきたということは、元の時代へ帰ることができるという証明になる。 とにかく私は、私をここへ連れてきたであろう誰かを突き止め 捕まえ、その誰かに私を元の世界へ戻すように言うしかできないのだ。 そしてそのためには私一人だけでは到底できそうにないのだ。 小規模ではあっても、組織の力が必要となるのだ。 そのためには、やはりあの侍たちに協力をしてもらうように頼まなければならないだろう。 しかし、彼らがすんなりと協力してくれるだろうか・・・
私の場合、暗い部屋でただ一人、考えを張り巡らしていると悲しみや、寂しさや、不安や、恐怖というものがひたひたと足音を立てて近づいてくるのだ。 そして私はいつまで経ってもそれを振り払うことができずに この部屋で最初に目覚めた時のようにそれらと共存していかなくてはならないのだった。
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4月28日(金)22:55 | トラックバック(0) | コメント(62) | THE TALE OF... | 管理
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