THE TALE OF...
 
~snigle malt whisky~
 


右側には侍がいた

ここがどこかのかをひたすら考えていても、どうにもならないことくらいはわかっているという意見を持つだけの頭を私は持っていた。
不快な音と振動によって目を覚まし、わけのわからない四角い部屋に閉じ込められ、自分が誰であったかも思い出せないという特殊な体験が、今自分自身に起こり、恐怖と不安と一体になりながら、どこかでは「まぁいいか」という答えが頭の中をさまよっている。

おそらくその「まぁいいか」という答えは、私に掴み取ってもらうべく必死にアピールしてきているのだろうが、私はそれを敢えて選択しないでいる。
まだ考えることを放棄したくはない。



気がつけば鉄製の小さな椅子に腰をかけ、目の前にベルトコンベアーに乗って流れてくる得体の知れない、どこか生卵を溶いたようなどろりとした液体の入った容器に、黒い色の粉末を、右手で持っている小さいスプーン一杯分だけ入れるという作業をひたすら繰り返していた。
一定の時間でベルトコンベアーは左のほうへ流れていき、
私の左側では、誰かが私が黒い粉末を入れた後、緑色の液体をスポイトで数滴入れる作業をしていた。
どうやら私はあの四角い部屋を出てからここへつれてこられたらしく、足には枷がつけられ、この場所から動けない状態だった。

この私の左側で緑色の液体をスポイトで数滴入れる作業をしている人間も、私と同様に四角い部屋からつれてこられたのだろうか。そして、自分自身が誰だかわからない、思い出せない状態で、この流れ作業をしているのだろうか。
だとしたら私の左側にいる人もひょっとしたら
「私の右側で黒い粉末を入れている人は四角い部屋から出てきて、自分が誰だかわかっていないんだろうか」とでも思っているのだろうか。

そういえば、私の右側の人はどんな作業をしているんだろうか。
私のところに流れてくるのはどろりとした液体だ。
私はそっと右側をみてみた。



4月11日(火)22:31 | トラックバック(0) | コメント(0) | 頭の中 | 管理

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